第8回住まいづくりサロン
「山の仕事見学ツアー
日時:1999年12月4日 10:00〜14:00
場所:天竜市横川 大石さん所有森林・榊原商店
出席者:大人54人子供6人 38家族



 12月にしては風も穏やかで、快晴に恵まれ、気持ちの良い一日でした。今回は実際 に山の中に入って「樹」が切り倒される様子を見学しました。榊原商店に集合の後、 車10台ほどに相乗りして20分ほど山の中に入り、森林の中を15分ほど歩いて急傾斜地 を下るとそこに樹齢125年の杉が神々しく立っていました。ほとんどの方が初めての 山道(道はありませんが)だいぶ閉口したようです。現場では、榊原商店で木を切る 仕事をしておられる栗田さんが木の倒し方の話をしてくださり、その後実際の伐倒で す。受け口を三角に切り取る時、木を倒す方向をじっと眺め、数十メートル先に立て た一本の小枝を目標に「あの枝の所に倒す」との宣言。直径1メートルはあろうかと いう125年もの間ひっそりと天竜の山を見守ってきた「杉」が地響きと共に正確に一 本の小枝の上に倒れました。
 参加者からはどよめきの声、しかし、少しの寂しさを感じたのは私だけではなかっ た様に思います。
 こういう木を上手に生かしていってほしい、この現場に立ち会った人全員がそう思っ たに違いありません。
 その後、もう一本100年生の木を切って下さり、また、今年家を建てる建て主さん で腕に自信のある方は、自分の家に使う木を自分の手で一本ずつ切らせていただけま した。きっと、新しい家が建った時「自分の木」として思い入れもひとしおとなると 思います。
 昼食は榊原さんが山の上で豚汁とサンマ、椎茸のごちそうを用意して下さり、心も お腹も充実した見学となりました。
 最後に榊原商店にもどり森林所有者の大石さんや、素材生産者の榊原さんに森林の 現状の話をしていただき日頃生活の中で何気なく使っている木がどれほど人の手と時 間がかけられ世の中に出ていっているか、また、天竜の林業がどういう状況なのかを 教えて頂き解散となりました。
 これから家を考えている人はもちろん、木に携わってものをつくる人にとっても今 回の見学は印象深いものだったと思います。どうしても我々は素材はなんでも均質な ものの様に考えがちになりますが、一本一本生命を宿した「もの」の大切さを考えさ せられた一日でした。
〈感想カードの紹介〉
  1. 沢の静かなところで100年以上育た樹を切るということを今一度自分なりに考え直してみたいと思います。家を造る側の立場からは粗末にできないと思います。もっと樹を生かせる使い方を考えてみたいものです。一緒に考えたり、教えてもらいたいと思いますのでこれからも宜しくお願いします。

  2. 木が倒れるときのあの音は最後のうめき声か?いやそれとも産声か?普段は何も言わないが、その秘められたパワーを感じた。

  3. 初めて参加させていただきましたが、とても感心しました。山歩きは好きですが、木が切られてからどうなるかを考えた事はありません。林業家の方が、自分の親のまた親の代が植えた木を今切らせてもらっているという言葉を聞き、長い年月をかけて育てられたものを使うということにとてもありがたみを感じます。大切に無駄無く使ってあげないといけないなと思いました。心残る日でした。今日は楽しかったです。

  4. 先々代が手がけた木を目の前で切る所は感慨無量です。百年以上あの森の中で生き続けいよいよお嫁入りの時期が来たのだなと思うと涙が出てきます。木は人々の生活の器として欠かせないはず、ほんものの木の味の大切さを感じました。ほんとうにありがとうございました。